吉岡幹雄さん今年6月で定年

作曲家の想像を超えた「一打」が理想

今年6月で定年を迎える札幌交響楽団の
ベテラン打楽器奏者、吉岡幹雄さん(59歳)
★音楽人生を振り返っていかがですか。
 入団34年目ですが、あっという間でした。今の札響の打楽器の4人のうち私を含む3人は、武蔵野音大時代の小林美隆先生(現在退職、17歳でN響に入り、カラヤン来日の折にはカラヤンの要望により全曲ティンパニーを演奏)の3代にわたる教え子。うち最年少の一人は、私が入団時から愛用しているシンバルと同じくらいの年齢なんです。そんなところに歴史を感じますね。

★打楽器を始めたきっかけは。
 私は富山市の日蓮宗の寺の長男で、父が鳴らす鐘や太鼓に慣れ親しんでいました。中学時代、ヨハン・シュトラウスの曲の小太鼓にあこがれ、ブラスバンド部で打楽器を始め、武蔵野音大に進みました。父は猛反対しましたが、若いころに画家志望だったこともあり、最後は理解してくれました。寺は弟が継いでいます。

★打楽器の面白みはどこにあるのでしょう。
 打楽器ではシンバルが好きです。“音楽のスパイス”と言われますが、クラシックでは珍しく、さじ加減、つまり音の強さや長さを奏者の裁量に任せるところがあります。そうした自由さが魅力です。譜面に現れない、作曲家の理想を超えるような「会心の一打」を目指してきました。しかし、イメージはありますが、34年間やっていて、いまだ届きません。道は遠いのです。

★札響は今、財政難に陥っていますね。
 どのオーケストラも事情は同じですが、さびしい限りです。人権費負担が大きいことがありますが、音楽家にも最低限の待遇は必要。国や自治体の補助がなければやっていけないのが実情です。もちろん我々にも、お客さんを呼ぶための努力が求められています。

★定年後は。
 嘱託として残る方向で進んでいます。ただ楽団の若返りを考えると、それがいいことなのかどうか疑問です。札響はこれから成長する楽団。私はご覧の通りの多趣味で、老後も退屈することはないでしょう。
吉岡さんは楽器作りの名人でもある。
マーラーの「交響曲第2番復活」で使う「鐘」
も最新作でとても素晴らしい音がする。
世界に一つしかないこの「復活の鐘」は札響
の貴重な財産の一つと成りました。
5月20日の道銀ライラックコンサートのチャイ
コフスキーの序曲「1812年」でも使う予定。
2002年5月11日
2002年1月5日の読売新聞に掲載された文章を紹介しています。

まさに“打楽器職人”

札響の打楽器で、首席奏者の真貝裕司さんは直弟子、藤原靖久さんは孫弟子にあたる。
地方オーケストラで、師弟が同じ楽団に在籍するのはさほど珍しくはないが、“師弟三代”となると、極めてまれ。札響打楽器の歴史と言えるだろう。打楽器の真髄について訥々と語る姿は“打楽器の職人”のイメージがピッタリだった。
 札幌市豊平区の自室は、一面黒塗り、年代物のオーディオセット、無線機器、自作のパソコンが所狭しと並び、趣味の多さを物語る。
 真貝さんが2001年5月に発足させた「札幌カスタネット協会」(会員258人、2002年5月11日現在)にも、「副会長兼シルバー会員ボケ防止相談役」として参加している。
 自慢のオーディオで聴くのは、もっぱらジャズ。「音楽は幅広く聴かなければだめ」と笑う。奥深い経験と幅広い視野。今後の札響に、まだまだ必要な人だ。  (竹内 誠一郎)

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札幌コンサートホール(キタラ)でのリハーサル
でシンバルを演奏している吉岡さん。
(尾高忠明指揮のラフマニノフ作曲「交響曲第1
番」、2002年5月13日)
2002年6月21日  吉岡さん札響正団員最後の定期演奏会でした。
              外山雄三指揮 ショスタコーヴィチの交響曲第10番はシンバルも大活躍でした!

当日のリハーサルの前にはセレモニーが行われ、
吉岡さんには札響楽員一同からプレゼントとしてパソコン用17インチ液晶ディスプレイが贈られました。
指揮者の外山さんからもカンパをいただきました。
ありがとうございました。

パソコンの達人も嬉しそう!
演奏会終了後に花束を贈呈された吉岡さん。
ショスタコは大変な熱演で打楽器も大活躍!
吉岡さんを囲み演奏会に出演した打楽器メンバーで記念撮影パチリ。
演奏会終了後にホテルアーサーにて
吉岡さんの定年退職記念パーティー
が開かれました。
東京から吉岡さんのお弟子さんも駆けつけてくれました。
トロンボーンの余田さんも来てくれました。

飲み放題で嬉しそう!
弘前からもお弟子さんが駆けつけてくれました。
札幌のマリンバ打楽器の皆様も来てくれました。

料理もおいしいわ!
パーティーでは吉岡さんの音楽人生を振り返る
生まれてから今日までのスライドショーが行われ
大うけでした。

私も「お祝いのカスタネット」の演奏をしました。
皆で吉岡さんの思い出話をして楽しいひと時を過ごしました。
初めて聞く凄い話や、おもしろい話もたくさんあり、
皆もびっくり、感動!
最後に吉岡さんからとても含蓄のあるお言葉があり、
皆で聞き入ってしまいました。
すばらしい思い出に残るパーティーでした。

吉岡さんはあと1年間は嘱託で札響に残ります。

これからもよろしくお願いいたします。